今回からトランスポーターシリーズ、個々の作品について書いていきます。

トランスポーター(02)

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監督:ルイ・レテリエ、コーリー・ユン

出演:ジェイソン・ステイサム、スー・チー



あらすじは以下の通り。
南仏に暮らすフランクはプロの運び屋。"契約厳守""名前は聞かない""依頼品は開けない"という3つのルールの下、高額な報酬と引き換えにワケありの依頼品であろうが正確に目的地まで運ぶ。この日も依頼品である3人の強盗犯を愛車に乗せ、追走する警察を見事に振り切って目的地に送り届けた。そんなフランクにある組織から新たな仕事が入る。いつも通り車のトランクに依頼品のバッグを積み、目的地へと向かう。が、道中でバッグに不審を感じたフランクは、自らのルールを破ってつい開けてしまう。すると、そこには手足を縛られた中国人美女が入っていた。



監督のルイ・レテリエは第二監督や短編の経験しかない実質の長編デビュー作です。そんな彼をサポートしたのは共同監督のコーリー・ユン。コーリー・ユンは1951年生まれで中国戯劇学院に所属していて同期にいたのがサモ・ハン・キンポーやジャッキー・チェン、ユン・ピョウなど。卒業後はサモ・ハンらと映画の道へすすみチーム・サモ・ハンである洪家班のメンバーとして活躍。自身の監督デビューはコナン・リーと真田広之が共演した「龍の忍者」(82)です。

コーリー・ユンのキャリアが面白いのが香港時代から実に多くの外国人と仕事をしてきたことです。
初監督作「龍の忍者」では日本人である真田広之。「レディ・ハード 香港大捜査線」(85)、「検事 Мrハ―/俺が法律だ」(86)、「98分署香港レディ・コップス」(90)ではシンシア・ラスロック。「シンデレラ・ボーイ」(86)ではジャン・クロード・ヴァンダム。「レイジング・サンダー」(87)ではローレン・アベドン、マシアス・ヒューズと香港映画界に出稼ぎに来ていた多くの欧米マーシャルアーツ俳優とお仕事をこなしています。もしかするとコーリー・ユンという人物は人種関係なく人間関係を作るのが上手だったり、多種多様な文化を受け入れて対応できる人格なのかも知れません。

香港時代で特筆すべき事はキャリア中期のベストパートナーとなるジェット・リーとの仕事ぶりがあります。「レジェンド・オブ・フラッシュ・ファイター 格闘飛龍」(93)、「レジェンド・オブ・フラッシュ・ファイター 電光飛龍」(93)といった武侠片だけでなく「ターゲット・ブルー」(94)、「D&D 完全黙秘」(94)といった現代劇でもジェット・リーとコンビを組み秀作、佳作を連発しています。「マトリックス」前後に香港の人材がハリウッドに流れてからもジェット・リーと共に「リーサル・ウェポン4」(98)に携わりユンは第2班監督でした。(おそらくアクション設計全般ではないでしょうか)その後のジェットのハリウッド映画には必ず携わるようになります。「ロミオ・マスト・ダイ」(00)、「キス・オブ・ザ・ドラゴン」(01)。ハリウッドのキャンパスの中でジェット・リーの魅力を最大限に引き出したのはコーリー・ユンではないでしょうか。

そんなコーリー・ユンが「トランスポーター」でジェイソン・ステイサムのポテンシャルを最大限に引き出しました。「トランスポーター」の面白味はカーチェイスではなくユニークなアクション設計とそれを体現するジェイソン・ステイサムにあると思います。ステイサムはジェット・リーのように華麗でしなやかな動きが出来るはずもなく、無骨な印象です。ステイサムの体格と迫力を最大限に活かすためにコーリー・ユンはアクションの合間にステイサムに見えを切らせました。これは複数との乱打戦において最大限に効果を発揮するのですが間合いに入ってきた相手を次々と最短で倒して、一人をとらえる。敵を捕らえながら回りを囲む敵に睨みを利かせる。今ではステイサム映画に当たり前に出てくる場面ですね。敵の一人を捕らえなくても、倒したらそのままの姿勢で睨みを利かせて回りの敵を威嚇する。この一連のリズムと迫力がまるで歌舞伎の見え切りのようです。線が細く顔が童顔のジェット・リーではこうはいきません。体格がよく、顔面力が強いステイサムだからこそ成り立つ動きなのです。ステイサムは本作ですっかり自分のポジションを見つけその後のキャリアを積んでいく事になります。

さて本作の見事なアクション設計でいくとフランクがマット・シュルツ扮するウォール・ストリート邸を襲撃する場面とバスの車庫にて複数の敵と闘う場面の二つがあります。まったくシチュエーションの違う場面なのでどちらともユニークです。

先ずストリート邸襲撃シーンですが拳銃を背中越しに受け取って背面撃ちをしたり、発砲した銃弾をエフェクトで表現したりトリッキーかつマンガチックなアクションシークエンスとなっています。

次に後半の停車しているバスの内外を移動しながら敵を倒していくアクションは流石コーリー・ユン!という出来栄え。裸になったステイサムが体にオイルを塗り敵に捕まらないように滑りながら闘うアクション。オイル溜まりとなった床を自転車のペダルを利用して立ち上がり敵を蹴り倒していくアクション。どれも欧米のアクションコレオグラファーでは思いつかない発想だと思います。ちなみこのアイデアはジェット・リー主演「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地争覇」でツイ・ハークが実践済みです。

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※裸になる必然性をつくります。

車を運転させても、徒手空拳で闘わせても強いジェイソン・ステイサム=フランク・マーティンは当然女性にも惚れられます。ヒロインは台湾出身の中国人女優 スー・チーです。スー・チーは「トランスポーター」出演後も継続して欧米映画に進出するものと思っていましたが、中国に戻り自国でキャリアを作る事になります。不法移民組織のボス リック・ヤンです。「ラスト・エンペラー」(88)や「NYPD15分署」(00)といったハリウッド作品の中国映画では顔なじみの俳優さんですね。このように中国人の不法移民のお話しなので大量に中華系俳優が出演していますね。


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※この頃のスー・チーはめっちゃ好みです。

物語的にピークは終盤前のバス車庫でのアクションです。その後ハイウェイでのアクションが繰り広げられますが、余りにも無謀なアクションの連続でそれまでの地に足が付いたアクションとはかけ離れてトーンダウンしてしまいます。また、マット・シュルツとステイサムのタイマンバトルもないのが不満です。愛車のBMWから離れてしまい‘トランスポーター’としての独自性がなくなってしまっている事もあり、クライマックスはハイテンションの展開なのに雑な印象を受けるのが残念です。