ジャン・クロード・ ヴァンダムのフォロワーにして既にヴァンダム・スタイルを超越して しまったスコット・アドキンス主演作です。本作は 「未体験ゾーンの映画たち 2014」で劇場にて限定公開されていました。

ガンズ・アンド・ストレンジャー(12)
ガンズ・アンド・ストレンジャー(12)

監督:エドゥアルド・ロドリゲス
出演:スコット・アドキンス、クリスチャン・スレイター、 イヴェット・イェイツ

あらすじは以下の通り。
追われる身の男は、大金の詰まったカバンを手に国境を越え、 メキシコの小さな町エル・フロンテーラへと流れ着く。だが、 町の住人たちはアウトサイダーには徹底的に冷たく、 孤立した男を次から次へともめ事が襲う。 やがてギャングみたいな保安官や酒場の女主人らを巻き込み、 事態は思いがけない方向に進んでいく。

スコット・ アドキンスがいまいち一級スターになれないのは単独主演作のクオリティが頭ひとつ抜けないからではないでしょうか。盟友アイザック・フロレンティーンと「人質奪還 アラブテロVSアメリカ特殊部隊」(03)「デッドロックⅡ」( 06)「デッドロックⅢ」「NINJA」(09)「ニンジャ・ アベンジャーズ」(13) といった傑作マーシャルアーツ映画を作る傍ら「ボーン・ アルティメイタム」(07)「エクスペンダブルズ2」(12)「 ゼロ・ダーク・サーティ」(12)「ザ・ヘラクレス」(14)「 ドクターストレンジ」(16) といった大作に脇役で出演しています。また、 これ以外でもヴァンダムフォロワー作品への出演が多くヴァンダム と共演した「プロテクター」(08)「ジャン=クロード・ ヴァン・ダム/アサシン・ゲーム」(11)「ユニバーサル・ ソルジャー 殺戮の黙示録」(12)「エクスペンダブルズ2」、新作「 ハード・ターゲット2 -ファイティング・プライド-」(16)はヴァンダムと共演こそしていませんがヴァンダム主演作の続 編です。このように アドキンスは単独主演作の合間に3タイプの作品でキャリアを構成している様に見受けられます。

 ①アイザック・フロレンティーン作品
 ②ヴァンダムフォロワー作品
 ③大作の脇役

もちろん①と②がリンクしたりする作品もありますが、 単純化してしまうとこの3タイプかと思います。

そして「ガンズ・アンド・ストレンジャー」は①②③にも属さない低予算主演作ですが大凡この手のアドキンス主演作は質が悪い。先ず予算が限られている事が
作品から露呈されている。「ガンズ・ アンド・ストレンジャー」 なんて同じシークエンスをただ繰り返しているだけです。 同じキャラクターに鞄を3度も盗まれる下りはスコット・ アドキンスを間抜けに見せてしまうだけです。 限られた予算で映画としての尺を稼がなければいけないので自ずと 物語の転がし方に綻びが出ます。主人公スコット・ アドキンスと女主人イヴェット・ イェイツが急接近する要因がありませんし、 よそ者に水を与えない等文字通りの水増し要素は物語において何の 起点にもなりません。また、スコット・ アドキンスのポテンシャルを活かしきれないのも問題です。 鑑賞者は少なからずアドキンスのアクションを期待しているでしょ う。ファイトシーンはアドキンスの全身を映さず、 細かくカットを割り、 スローモーションで編集して折角の動きがズタズタです。 それでも中盤の市内銃撃アクションはそこそこ迫力ありました。 あのシーンだけは撮影ユニットが違うのでしょう。

本作には「エクスペンダブルズ」参戦資格充分なクリスチャン・ スレーターも出演しており、いい意味で小者感が出ています。 かつて一流ハリウッドスターだったスレーターもDVDストレート 規模の作品に出るようになって久しいですが、 本作でのアドキンスとの相性は余り良くなかったかと思います。
ガンズ・アンド・ストレンジャースコット
※作品選びが悪いアドキンス。

また本作は北村龍平の「VERSUS -ヴァーサス-」(01)のテイストと似通っていると感じました。 これが新人監督のデビュー作なら許されますが、 一流のマーシャルアーツ俳優を採用しておいて「VERSUS -ヴァーサス-」のようなくどさを感じると辟易してしまいます。

新世代のマーシャルアーツ俳優として期待されていたスコット・ アドキンスもいつの間にか40歳です。 アドキンスが本作レベルの作品に出続けるようであれば、 後10年程で俳優としての仕事を徐々に減らしていき、 ファイトコレオグラファーなど裏方仕事に移行するのではないでし ょうか。 そうなる前にアドキンスには決め手となる作品が欲しいものです。 期待を込めて。