「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」(16)の感想をアップしましたが、続いてドニー・イェンに視点をおいた記事を書きます。

今回「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」におけるドニー・イェンは本当に素晴らしかった。オープニングクレジットも頭から3番目の扱いという点からもドニー・イェンという男の重要性を理解していただけるかと思います。お話としては昔からよくある‘里見八犬伝もの’ではありますが、監督のギャレス・エドワーズはドニー・イェンが出演した「孫文の義士団」(09)をチェック済みだったのではないでしょうか。ドニー・イェンという男の凄さを体感できるシークエンスもきちんと用意されていましたが、スター・ウォーズという物語の世界観を壊さない程度の活躍にとどめています。穿った見方をするならば‘宇宙最強’の異名を持つドニー・イェンが‘宇宙戦争’に参戦するにあたり、強すぎるが故に全盲であるというハンディキャップを負わされたという見方が正しいのかもしれません。

さてドニー・イェン扮するチアルートがその実力を発揮する大立ち回りシーンですが、全盲が故にピンポイントで相手を攻撃する直線的な攻撃は少なく、間合いの範囲を攻撃できる円形の動きを多めにした殺陣だったかと思います。「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」の予告編を見た時にてっきり棒術だけを披露するかと思っていましたがきちんと蹴り技もありました。それも前掃腿や旋風脚といった遠心力を活用した動きも披露。スター・ウォーズの世界観できちんと中国武術を実践しているのは流石です。
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※ストームトルーパーを一人無双。レーザー光線を身一つでかわす。さすがだ。

また、ドニー・イェンのキャリア形成の仕上げ方も素晴らしい。「ハイランダー/最終戦士」(00)「ブレイド2」(02)の頃からハリウッドでも仕事をしはじめていたドニー・イェン。当然、ジャッキー・チェンやジェット・リーのようにハリウッドで主演映画を製作することもできた筈です。しかしドニーはそうはしなかった。「シャンハイ・ナイト」(03)の後香港へ戻り自らの主演映画やプロデュース作品を量産。「SPL/狼よ静かに死ね」(05)この頃からドニーの中で映画づくりに対する意識が変わっていったのかと思います。ド突き合う単純な格闘映画ではなく物語の中で格闘が昇華できる作品【「SPL/狼よ静かに死ね」「導火線 FLASH POINT」(07)「スペシャルID 特殊身分」(14)】や現代において敢えて功夫を意識した映画【「イップマン」シリーズ、「捜査官X」(11)「アイスマン」(14)「カンフー・ジャングル」(14)】そのどれもが挑戦的で実験的で質が高いものばかりです。このように香港で自分流の映画づくり、キャリア形成をした上で「スター・ウォーズ」に出演しているのです。この後ドニーはヴィン・ディーゼルと共演した「トリプルX:再起動」(17)やシリーズ第三弾「イップ・マン 継承」(15)の日本公開が控えています。まさに第三の全盛期を迎えつつあるドニー・イェンの今後の動きに注目です。